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最高裁判所第二小法廷 昭和43年(オ)448号 判決 1969年6月20日

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告代理人藤林益三、同島谷六郎、同山本晃夫の上告理由第一点について。

訴外矢竹芳造は本件手形を振り出し、上告人は、右手形を保証する意思でそれぞれ必要事項を記入し、記名捺印したものであり、かつ、結局現金一億円と引換えにということで右手形の振出人矢竹芳造から受取人碓氷司の手に右手形が交付されたものであるから、本件手形の振出および保証は有効になされたものであり、ただ詐欺により取り消しうるにすぎない旨の原判決の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯できる。原判決には所論の違法はなく、論旨は採用できない。

同第二点について。

被上告人が現に本件手形六通の所持人である旨の原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯できる。所論は独自の見解を述べるか、原判決の適法に認定した事実と異なる事実に基づいて原判決を破棄するものであるが、原判決には所論の違法はない。論旨は採用できない。

同第三点について。

被上告人は、訴外碓氷司が本件手形六通を訴外矢竹芳造から騙取したものであることの事情を知らずに、右手形六通を訴外碓氷司から白地裏書によつて譲渡を受けたものであり、したがつて、訴外矢竹芳造および右手形六通の保証人である上告人は、本件手形六通が訴外碓氷司によつて詐欺されたことをもつて被上告人に対抗することができない旨の原判決の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らして首肯できる。所論は原審の適法にした事実認定を非難するか、原審の適法にした認定と異なる事実に基づいて独自の見解を述べるものである。原判決には所論の違法はなく、論旨は採用できない。

よつて、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 城戸芳彦 裁判官 色川幸太郎 裁判官 村上朝一)

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